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[ふでおろし]…完結

Log Days…
ワタシは男子校で、2年の夏に商業高校の女子から好きだと告白されたがあっさり無視をした。
通学路で良く出会う女子高生から迫られて逃げ回ったたことがある…。
当時にしてはブッ飛んだ種類の女だった。

大学では鉱山学を専攻していたが、正直、地味な学問である。
専門書や図鑑に首っ丈で、時間を見つけては鉱床発見の予行探査と称し、名もない山地を歩き回っていた。
そんなところから山岳トンネル専門の土木技術者に進んだのであるが…。

女性の存在は特別に意識もせず、例え会話はしても友人以上の交流などその気もなかった。
”学生間で同棲!”と聞けば、「その分際で貴様、何様っ!」とばかり勢い胸ぐら捕まえる…。
そういう扱いずらい頑固者でもあって…。
堅物を地で行くような自称、硬派。
そういう学生生活を送っていた。
ただ、成人を過ぎれば、その筋の知識が全く無かったわけではないのだが…。
   ・
   ・
駒小の体に手を回した瞬間まで…直の女性との関係は皆無だった。
 
駒小は体を捩らせながらワタシの胸に入り込んできた。
両手で引き寄せてしっかり、きつく抱いた。
淡くてほんのり心地いい薄化粧の香りがした。

息詰まっていたものが一気に流れ出した安堵からなのだろうか…。
抱き合ったまま、ワタシが横になっていた布団の上に倒れ込んだ。
ただ、地毛で結った髪型が崩れないよう、駒小の肩口をかばいながら…。
黙ったままだったけれど、吐息は少し乱れていた。

共襟がはだけて乳房が見えた。
前身頃は乱れて、露出した桜色の大腿が着物の裏地の色に浮いて、その強烈な妖艶さに襲われた。
でも、帯を解くことにはためらいがあった。
着物の下は長襦袢で、その以外に体を覆うものは着けてない。

駒小はワタシを求めた。ワタシも駒小を求めた。
懸命に縋り付く小柄な体が愛おしかった。
ほどけた髪の性で妖艶さが増した。
白くて艶やかな肌が序々に桜色に、顔も紅潮して更に増した。
時折、口に手の平を当てがって声を抑えた…でも我慢した呼吸で余計に大きくなった。
駒小の体の硬直と少しの痙攣が示し合わせで…。
それをゆっくり、何度か確認し合った。
   ・
   ・
乳首が硬直し突飛すること、泉とか花に比喩する秘部の由縁も知った。

自から敢えてそうしなくても、重なり合えばお互いに自然に結合の形になる。
互い、誠実に求め合えば尚更に、抵抗もなく受け合える。

男にも女にも、互いにその自然体で成せるような位置や角度の構造で作られていて…。
そして痛みを伴わないような仕組みさえ備えている。
まして初めてなら、最もシンプルな形でいい。
欲情に血走った人間が、都合よく快楽のために作った煩悩は必要無い。

これが種族保存の法則に従うものだと解答するのは冷たすぎるが…。
人間の基層にある何かがそういう未経験さを補って、必然的な方向に導いてくれる…。
アダムとイヴが残した永遠の記憶だと思う。
   ・
   ・
目が覚めたのが11時過ぎで、それからの時間経過が分からない。
二人ともずっと、あえて時計の方向を避けていた。

玄関から射す光が赤いオレンジ色に明るくて、もう少しで5時だった。
日常に戻らなくてはならない今日が来てしまった。
もう始発の電車は動いている。

おそらく駒小は、2日を通してほとんど睡眠していない…でも気丈に振舞った。
ワタシも、不思議と睡魔は襲ってこなかった。

渋々と身支度を整えて、布団をたたみ、散らかった部屋を片付る。
その間の時間が切なかった。

どこか、いつかの宴席で会えるとは…気休めに過ぎない。
これで再会できる可能性は絶たれてしまう。
今生の別れにさえなることも理解できていた。

「駒小とワタシとは生きる世間が違う」
迫る時間に、一生懸命、自分にそう言い聞かせるしかなかった…。

店にはまだ誰も出勤してこない。
帳場に向かって空の会釈をして、玄関横の軒戸を潜って二人で一緒に外に出た。
光が眩しかった。

駒小をそそのかせて先に歩かせた。
ワタシは、それを確認して、少し間を置いて反対の方向へ歩いた。
電車の駅は、駒小の置屋と同じ方向の道筋になる…。
けれど、置屋の前で分かれる、そこまでの道のりが耐えられなく思ったからだ。
駒小が戸惑って振り向いたけれど、向かい合って少し笑って、お辞儀をし合ってまた歩き始めた。
40,50m歩くと四つ角で右に曲がる。
そこでもう一度、更にもう一度振り向き合って駒小を見送った。

駒小とはそこまでだった。
   
これがワタシの「筆おろし」。
24歳と2ヵ月目だった。


紛れもなく、全てが初めてのことだった。

けれど、禁断の行為を犯したことに間違いない…かも知れない。
女将に、置屋のお母さんに対して、後ろめたさが走った。
そして…。
素の、本当の苗字さえ聞かないまま、舞妓・駒小との出来事だったから…。
   ・
   ・
女房は10年程前に先立った。
厳しく封印していた秘密の品物があった。
もう許されるだろうから開いてある。

あの日、別れ際の軒戸を潜る直前に、咄嗟に渡してくれた大きな赤い珊瑚玉のカンザシ。
まとめ結した日本髪がハラッと崩れた。

ずっと前から…。
墓場に持っていくと決めている。

G70.jpg
  
------------------------------- 完 -------------------------------

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