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[ふでおろし]…第二話

Log Days…
先ず、お断り…。
第二話をこれで完結として書き出したのですが…。
ワタシの文章本来のまとまりの無さに加えて余談の多さの性で、どうやら「結」にたどり着けそうも無く…。
悪しからず、第三話追加で完結に致します。
飽きずにお読み頂ければ光栄です。

では、第二話…。

”芸妓”は京都など西方の呼び方で”げいこ”とか”げいぎ”と言い、関東方面では”芸者”と呼ぶ。
”舞妓”は芸妓の見習いを言う。関東方面では”半玉(はんぎょく)”とか”雛妓(おしゃく)”と呼ばれる。

舞妓の芸名は「駒小」と書いて”こまこ”と呼ばせていた。
芸名は置屋の名前に因んだり、義理姉妹の関係から姉さんの一文字を頂いたりもする。
小柄な160㎝に満たない華奢な姿態から、置屋のお母さん(女将)がそう名付けたそうだ。

※「こまこ」は実在した人物ですが、漢字の「駒」は当て字を用いています。

少しばかり余談になるけれども…。
ウチナーグチで語尾に、”ぐゎー”と付けて呼ぶ「小」がある。
子犬は”いんぐゎー”、小鳥”とぅいぐゎー”、小商店は”まちやーぐゎー”に小さな路地は”すーじぐゎー”…。
言語の世界で「小」は、特に体の一部を比喩して言う時の”体言挟みの修飾”という接頭語である。
”小耳に挟む”、”小首をかしげる”など”ちょっと”の意を表していて…。
いずれにしても小さいとか、可愛いとかの愛称語。愛着を込めた言い方である。

19歳と10か月…。
中学を卒業して直ぐに上京して「仕込み」として修行に入り、もうすぐ4年目を迎える歳だった。

目が覚めたのは11時過ぎで、もうすぐ日にちが変わる時刻。
3時間以上は死骸のように横たわっていたらしい。
宴会のお開きの時間にすれば随分と早くに倒れたものだ。

途中で何回も氷嚢を交換したり、渇いた喉を潤すために吸い飲みを使って給水さえしてくれていた。
不可解な譫言も聞いたらしい。

酔いが失せるにはまだ少し遠くて、後頭部がズキズキしていた。
明日の出勤・・・それが一番にあって、早く着替えて戻らなければと気が焦った。
けれど、終電時刻は過ぎていた。

料亭は屋根続きで旅館も営んでいた。
酔いを冷まして十分回復するまで、気にせずゆっくり、ふとん部屋を使っていいと女将からの言伝えがあった。
御贔屓さんへの格段の配慮だった。

でも、どうしてここに駒小が居る訳がわからない。
置屋からお約束で派遣されていて、花代にも代えられないはずなのに…。

駒小にしつこく理由を求めても、ただ小さく笑って「いいの、いいの」と返すだけだった。
後々での話だが…。
ワタシのことを気に入って下すった置屋のお母さんが、看護を言いつけてそのまま駒小を置き去ったそうだ。
・・・と料亭の女将から聞かされた。
直属の上司からも休養場所を拝借できるるようにと頼み込みもあったそうだ。

全部、全てワタシに心を寄せて頂いた方々のお陰・・・自分の不甲斐なさに萎れ込んだ。
足掻いてもどうしようもない現実に、その温情に甘えた。

駒小は、振袖も着替えて髪も結い直し、小股(襟足)の白塗りも落としてすっかり普段着姿になっていた。
ここで出会っただけの駒小の表と裏の姿を見た。
そして駒小は何のためらいも無く、それをワタシに曝け出している。
あり得ない出来事だった。

二人の空間が不思議な世界に感じた。
初対面である以前に、ただただ仕事上の都合で出会っただけで…。
謂れもない突拍子なトラブルに遭遇して、そして今、同じ部屋で同じ時間を共有している。
駒小の感情が探れない。
でも、不思議でもなかった。

並んで箪笥に背中を預け、両足を投げ出して座った。
そうしてる間ずっとワタシの二の腕あたりと駒小の肩が触れ合っていた。
柔らかな感触と体温を感じていた。
多分、たじろぎもしない駒小も同じだったと思うが、互いの存在を確かめていた。

どちらからの切欠でも無く…。
話の順番をめくる様に箪笥の引き金をカチャカチャといじりながら、駒小は話しを続けた。
生い立ち、小さい頃のこと、郷里のこと…学生時代を思い出深そうにポツリポツリと…。
上京して京都での普段のことも、住み込みの置屋のお母さんや先輩の姉さん(芸妓)のことなど。

ワタシは聞き手に徹した。
もう既に…駒小にのめり込み始めていた。

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<イメージ>
本文に登場する本人ではありません。京都 祇園甲部の紗月さんのお姿をお借りしています。

生まれは山口県長門・仙崎の漁師町で、4人兄弟の2番目。
6歳の時、父親が漁の途中の海で亡くなり、その後母親1人の手で育てられた。
一番上の姉は生まれつき障害があり、家事、生計を助ける相当な役割を駒小が背負っていたようだ。

中学を卒業と同時にしてこの道を選んだのは、苦境の背景と、自ら「花」を経験したかったからと言った。

ワタシも生まれて以来母子家庭で、お袋が気丈に頑張って育ててくれたが決して裕福でもなく…。
駒小の生い立ちに近い苦労もあったので、深い心の部分まで共感できた。
同じような境遇から生まれただろう価値観にも頷けた。

そんな一方で、何かを言いたげな、でも心に秘めると決心しているような…。
そんな素振りから、駒小の中の複雑な葛藤を感じていた。

もっと深く知りたいと思った…でも追い詰めたのはワタシかも知れない。
駒小は顔を隠す様に目尻を拭った。

駒小とワタシ…。
生きる世界が違い過ぎている。
ほんの少し年上なだけで、世間を生きてる時間は彼女が先だ。
ワタシにどんな言葉も見つけられない。口にすれば空を切るだけ…。

駒小が、箪笥の面に背中を滑らせるようにして上体を委ねてきて、ワタシの腕に頬を預けた。
心の葛藤を区切りたかったんだと思う。
何かを振り払いたかったんだと思う。

駒小の全部を抱きしめることしか出来なかった。
   ・
   ・
   ・
では、第二話はここまでとします…。
いよいよ次回で完結する予定です。
飽きずご期待頂ければ光栄です。

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