土佐人の粋狂

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現役時代の仕事柄、辞令片手に方々転勤を繰り返した。

土佐藩、高知県・・・。
云わず知れた坂本龍馬、岡本慎太郎、武市瑞山(半平太)など幕末の志士が産した土地である。
高知人は豪放磊落。
龍馬を地で行くような、また憧れとする者も多い。

太平洋の黒潮に乗って遠洋漁業に携わる者。カツオ漁で意気盛んな近海漁師達。
石灰石の採掘で気を上げる鉱夫連中・・・。
そんな人間、風土で育まれた土地であり、男衆はもちろん、女衆も結構、豪気な方が多いのである。

そんな土地柄に魅かれ、今も懐かしい場所である。

そして”酒豪土佐”!!
酒宴の席にもなれば、男女、老若・・・区別なく豪快に飲む!!
どの地方でも同じだが、何かの催し事だと言っては飲む!!
わざわざそういう祭りを作っては飲む!!
何もない暇だと云えば、屁理屈くっ付けてでも飲む!!

仕事柄、付き合いに接待にと酒の宴には必然的に出席したのだが・・・。
大下戸のオイラでも、途轍もなく楽しい世界に浸れるのだった。
ただただ酔う酒盛りではなく、飲んべえも、飲ませる側も遊び、遊ばせ上手な洒落た宴・・・。

そういう酒席の文化から、色々の座興が生まれたのだろう。
高知には、粋で、面白い、奇妙な・・・そういうお遊びがたくさんある。

お座敷遊びの「金毘羅船々」は誰でも知っているだろう。
「はし拳」はお箸を使った数合わせ遊びで、1対1で勝負して負けた相手に罰杯を飲ませる。
「可杯」を使う「ベロベロの神様」は、座敷に限らず居酒屋あたりでも当然のように始まる。
あとは「菊の花」とか、他にもいろいろ経験したけれど・・・。
その全部とも、絶対的な思い出になっている。

そんな思い出の品物に「可杯」なるものがある。
”べくはい”と読む(呼ぶ)。

候文(そうろうぶん)の書き方で、”何々すべく”と書く場合、その文の先頭に”可”の字を置いた(書いた)ところから・・・。
”下(か)に置けない”と洒落て「可杯(べくはい)」と名が付いたそうだ。
この命名も土佐人の粋な遊び心を感じる。

「可杯」には2つに大別されて「ベロベロの神様」で使う杯がある。
酒蔵「土佐司」で頂いたお土産と、良く利用した料亭の女将がくれたお餞別。

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”天狗””オカメ””ヒョットコ”のお面の杯と、3つの絵(文字)を描いだ”六角ゴマ”が1セット。
「ベロベロの~ぉ~神様は~、正直の神様よぉ~、オササ(お酒)の方へと、おも向きゃれ~、えぇ~おも向きゃれ~」
(だったはずだが?)とお囃子を歌いながら・・・。
座の内の一人が六角ゴマを回しそのコマが止まった柄の先に座った人が、コマの絵(文字)と同じ杯で酒を一気飲みする・・・。
というのが遊び方。
”天狗”は大きくて鼻の先まで酒が入るので・・・当たれば大変!!
「ベロベロの神様」は元は京都のお座敷遊びが伝わったとか・・・。
芸者さんの歌と三味線が揃えば最高に盛り上がる・・・いやそうでなくても盛り上がった!!
お囃子も、興が進めばだんだんと、キワドイ歌詞に変わっていく・・・。

しかし皆んな、いとも簡単にグイッと飲み干すののだ。いやはや豪傑なのだ。

そしてこれは民芸品風の「可杯」。もちろん実用品である。
一つには底に穴が開いている。飲み干さなければ手が離せない・・・。
もう一つは尖って丸い。つまり転がってしまうので、これも飲み干さなければこぼれてしまうという仕掛け。

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土佐人はとても”スイキョウ”なのである。
ただ、酔狂でなく、粋を好む粋狂なのである。

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